ミルクの適正温度とは?
- cou
- 2019年10月26日
- 読了時間: 5分
更新日:2020年3月18日

温度にこだわる訳
秋の深まりとともに、暖かい飲み物が恋しくなる季節になってきましたね。夏場はアイスラテばかりでバリスタの方は「早く冬にならないかな~」なんて思われてたのではないでしょうか?
そう、ホットのカフェラテが出始めるようになると、俄然、やる気がでますよね(笑)。
でね、いつものことなんですが、ミルクの温度はどれくらいにしてます?
65、70、75?まさかの80℃?!
まぁ、お店によって、バリスタによって様々ですかね。ただ、今回のお話はとても重要です。この国でカフェを経営するという意味においてです。
いつも何気なく飲んでいるカフェラテは熱いですか?ぬるいですか?
丁度いいと思っている方が大半でしょうね。
でもね、ミルクの甘さを知っているバリスタが作るラテを飲むと10人中10人が「ぬるい」と感じると思います。
お店で、コーヒーや紅茶を飲む時、熱くて文句言う人はいませんが、ぬるいと文句を言う人はいると思います。「ぬるい」というのは、「冷めたもの」「時間が経ったもの」と受け取られがちですので、仕方のない事なのかもしれません。
日頃から、冷たい牛乳は飲んでも、ホットミルクを飲む習慣のない日本人にとって、ラテのミルクは苦いコーヒーをマイルドにしてくれるものといったイメージでしょうか。コーヒーは飲めないけど、カフェオレやカフェラテは好きという方も多いと思います。
ミルクをゆっくりと弱火で温めていくと、鍋の淵に小さな気泡ができてきますよね?その時のミルクの温度が大体50℃前後になります。飲んでみるとミルクがとても甘く感じられると思います。これは、ミルクの中にある乳糖の働きが、熱を加えることで活発になり、結果ミルクが甘くなると思われてきたのですが、確かに乳糖はラクターゼという酵素によってガラクトースとグルコースという糖質に分解されるのですが、これは体の中(主に腸で)に吸収された後の話なので、飲んでいる時には糖質への変化はおきないのです。
「でも、確かに甘味が増す気が、、、」
これは、人間の舌が冷たいものより、温かいものの方がより甘さをより認識できるからということになります。特に体温近くになったものが顕著に感じるようです。
では温めればそれでよいのか? というと違うんです。
ミルクを温め続けると、何やら嫌な匂いがしてきますよね?
これはミルクの中のたんぱく質に含まれる硫黄原子が変化してしまうからです。よく言われるのが「ゆで卵」のような匂いで、あまりよい匂いではありません。
ミルクの中のたんぱく質が変化する温度が74℃前後といわれており、これを越えるとアウトということになります。
リミットは74℃
バリスタの苦悩
さて、ミルクは温めたほうがより甘味を感じやすいということ、でも温めすぎるとたんぱく質が変化して嫌な匂いになること、そしてそのリミットが74℃であることはわかりましたね。
74℃
体温の約2倍ですか。お風呂だったら火傷するレベルです。しかし、飲み物としての74℃は決して熱くはありません。コーヒーは90℃前後から抽出しますので、お客様が飲まれる時には80℃前後になっています。これよりやや低いぐらいです。
ただ、カフェオレやカフェラテではコーヒーの温度も関係してきますが、一般的なエスプレッソはドリップよりも低く抽出されますので、70℃前後でしょうか、もっと低くなる場合もあります。
ミルクをギリギリまで温めても、エスプレッソと混ぜてしまえば、それより低くなることはあっても、高くはなりません。タイムラグを考慮すれば、お客様が飲まれる時には多分70℃を切っています。
「すみません、ちょっとぬるいんですけど、、、」
お客様からのこんな声を聞いた事ありませんか?
私は3回作り直して、それでも「ぬるい」と言われたので、5分ほど説明したのち、あえなくキャンセルされた経験があります(笑)。
「もう少し熱くして!」
「ですが、お客様、これ以上熱くしますと、ミルクの、、、」
「え?でも、他所のお店ではもっと熱かったわよ?」
「はぁ、、、」
日本人は、熱い鍋やうどん、緑茶など熱い食べ物や飲み物を「フーッ、フーッ」言いながら食するという性質を持っています。特に冬場などは暑いもので体を温めるいった食文化があります。
海外の人が「鍋焼きうどん」を見て、何かの罰ゲームだと思ったというのは、あながち冗談でもないようです。つまり「熱い」か「冷たい」が美味しさの基準であっても、「ぬるい」はないという事ですかね。(お酒はぬるめのカンがいいというフレーズあったような?)
ただ、美味しいカフェラテを飲んでいただきたいだけなんですけど、、
お店にとって大事なことは何でしょう?
バリスタにとって大事なこととは何でしょう?
ミルクをスチーミングする時、空気の入れ込みや撹拌に気をとられてついつい見落としがちなのがミルクの適正温度です。お店によっては何度と指定されている場合もありますが、感覚だけで覚えている方も多いでしょう。一度、自分の作るミルクが何度なのか計ってみるのも大事だと思います。
美味しいコーヒーやカフェラテを作るのがバリスタの仕事なのですが、お客様の望むものがそれではない場合もあります。そんな時「わかってないなぁ、、、」と言いたい気持ちはわかりますが、そういった方も満足させるのがカフェの役割だということを理解しておく必要があります。
大事なことは、自分たちのお店を選んで来ていただいたお客様をがっかりさせてはならないという事です。お客様をよく観察することで、その方の好みまでわかるようになれば、ミルクの温度を変える事への抵抗はなくなるというものです。
相手が飲みたいものを作る。
バリスタとして、これ以上のスキルは存在しませんし、カフェはそうあるべきなのです。
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