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コーヒーのタイミング ~その2~

  • cou
  • 2020年1月14日
  • 読了時間: 4分

酸化することに意義がある⁈

今年はオリンピック・イヤーなのでね(笑)。


さて前回、コーヒーにはタイミングがあると書きました。コーヒーの抽出においても、お湯を注ぐタイミングというものがありますが、それ以前に焙煎後どれくらい経った豆を使うのかというのが重要になってきます。つまり、コーヒー豆として使用するタイミングですね。


採れたての野菜や果物が、新鮮でみずみずしいことは誰もが認めるところです。「採れたて=新鮮・美味しい」という図式が成り立ちますからね。これをコーヒーにあてはめると、「採れたて」が「淹れたて」になるでしょうか。しかし、コーヒーの場合、「淹れたて=新鮮・美味しい」とは限りません。


え?淹れたてのコーヒーって新鮮でおいしいんじゃないの?


語弊がないように説明しますと、常温で半年経った豆を使用した場合、いくら淹れたてでも「新鮮・おいしい」とはならないからです。すなわちコーヒー豆の場合、焙煎からどれくらい時間が経っているかによって味もおいしさも変わってしまうからです。


では、焙煎したての豆なら問題ないかというと、それも違います。


食品は全てにおいて、空気にさらされた状態では酸化していきます。たとえパックに真空状態で保存されたものも、開けた瞬間から酸化が始まります。酸化は食品の劣化を早め、風味を奪いますので、パッケージにはよく「開封後はお早めにお召し上がりください」と書かれていたりします。話しはそれますが、この劣化の速度を遅くするために「酸化防止剤」、風味を持続させるために「香料」などの添加物が使用されます。


当然、コーヒー豆も焙煎後は徐々に酸化していきます。ですから、焙煎後は真空状態にしておきたいところですが、焙煎後のコーヒー豆からはしばらくの間、ガス(二酸化炭素)が放出されますので、密封してしまうとパンパンに膨らんでしまい、最悪、破裂してしまう危険があります(袋がね)。


コーヒー豆は多孔質構造といって、中にたくさんの小さな空洞を持っており、そこには生豆の時は水分が、焙煎後、水分が蒸発した後はガスで埋まっています。そしてこのガスは時間の経過とともに、徐々に放出されていきます。鮮度の良い豆とは、焙煎後、時間があまり経っていないことを意味しますから、長い時間が経過した豆には、ガスがほとんど存在しません。


コーヒーを淹れる時にプワーッと膨らむのは、このガスが一気に放出されるからです。焙煎したての豆は多くのガスを含んでいますので、驚くくらい膨らみます。通常は3投目くらいからは、膨らみは抑えられるのですが、ずっと膨らみます。


それだけ新鮮ってことなんだからいいんじゃない?


って思うでしょ?


お湯が通って行く方向と逆方向に上がってきて予想外の動きをする豆は、慣れた人でもコントロールが難しいと思います。放出されるガスが多すぎて、豆自体からの抽出が弱くなるのか、味も風味もコーヒーとは程遠いものです。香ばしさは勿論あるのですが、輪郭のないぼやけた感じがすると思います。実際、焙煎後、荒熱の取れた豆はコーヒーの香りがしません。それが時間が経つとあの香しいコーヒーに変わっていくのです。


不思議でしょ?


食品の処理方法に「エイジング」というのがあります。熟成のことですが、時間をかけることで熟成がなされ、より旨味が出るといわれています。グルタミン酸を多く含むトマトなどは、熟成されることで甘味が増します。「エイジング」は単に酸化させることとは違いますが、コーヒー豆の場合、酸化させてやることで味が落ち着きます。そして、前述したガスが適度に豆を守り、豆自体の酸化を遅くします。焙煎後2日間ぐらいで、次第にガスの放出は落ち着いてきます。

缶や瓶に保存していたら一旦、中のガスを抜きましょう。(すぐ閉めてくださいね) その後は使う度に空気に触れてしまいますから、酸化していきますが、ガスもまだ出てますのですぐに劣化はしません。

こうして、日を追うごとに味がまろやかに変化していきます。


コーヒーは飲むタイミングでも味が変化します。焙煎後に使うタイミングで味が違い、抽出の仕方でも味が違い、更には飲むタイミングまで。面白いでしょ?


こうして考えてみると、ベストなコーヒーを淹れるのにいかにタイミングが重要かがわかると思います。

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